大腸ポリープについて
大腸ポリープとは、大腸の粘膜にできるイボ状の隆起の総称です。ポリープにはいくつかの種類がありますが、特に注意が必要なのが「腺腫(せんしゅ)」と呼ばれるタイプのポリープです。腺腫は、放置すると将来的に大腸がんへと進行する可能性があるため、「がんの芽」とも呼ばれています。
大腸ポリープと大腸がんの関係
大腸がんの多くは、この腺腫性ポリープが徐々に大きくなり、時間をかけてがんへと変化していくことが知られています。このプロセスを「腺腫-癌(がん)シークエンス」と呼びます。つまり、腺腫性ポリープを切除することは、将来の大腸がんを予防することに直結する非常に重要な治療なのです。
近年、腺腫とは異なる経路でがん化するタイプのポリープも注目されています。それが「SSL(Sessile Serrated Lesion:無茎性鋸歯状病変)」です。SSLは平坦な形をしていることが多く、発見が難しい場合がありますが、これも放置すると大腸がんになる可能性があるため、腺腫と同様に切除の対象となります。
なぜポリープの治療が重要なのか?
- 大腸がんの予防: 腺腫性ポリープやSSLを切除することで、将来大腸がんになるリスクを大幅に減らすことができます。これは「がんの芽を摘む」という、最も効果的な大腸がん予防策です。
- 早期発見・早期治療:: ポリープの段階で発見し切除することで、大腸がんが進行する前に治療を完結させることが可能です。早期がんであれば、内視鏡による切除で完治が期待できます。
- 身体への負担軽減:: ポリープ切除は、大腸がんの手術に比べて身体への負担がはるかに少なく、多くの場合、日帰りで行うことができます。
ポリープ切除による大腸がん予防効果
大腸ポリープの内視鏡的切除が大腸がんの発生や死亡を予防する効果は、多くの研究で証明されています。
- 米国で行われた大規模な研究である「National Polyp Study(NPS)」では、腺腫性ポリープを切除することにより、大腸がんの発生率が76~90%減少したと報告されています。
- 日本で行われた「Japan Polyp Study(JPS)」でも、内視鏡的ポリープ切除によって大腸がんの発生が約86%減少することが確認されており、女性においては研究期間中の大腸がん発症例がゼロであったことも報告されています。
これらの研究結果は、定期的な大腸内視鏡検査とポリープ切除が、大腸がんの予防に極めて有効であることを示しています。
当院でのポリープ切除について
当院では、大腸内視鏡検査中に発見された腺腫性ポリープやSSLに対し、その場で日帰りでの切除治療を行っています。経験豊富な医師が、患者様の状態やポリープの特性を考慮し、最も適切な方法で安全に切除いたします。
【日帰りポリープ切除の適応】
主に10mm大以下のポリープが日帰り切除の対象となります。大きさや形状、個数によっては、入院による切除が必要と判断し、連携する医療機関へご紹介する場合もあります。安全性を最優先に考え、慎重に適応を判断いたします。
【日帰りポリープ切除のメリット】
入院の必要がなく、お仕事や日常生活への影響を最小限に抑えながら、大腸がんの予防につながる治療を受けることができます。
切除後の注意点
ポリープ切除は内視鏡による手術です。切除後は、出血や穿孔(腸に穴が開くこと)などの偶発症のリスクを避けるため、以下の点にご注意ください。
- 検査後1週間程度は、飲酒、激しい運動、長時間の移動や旅行などは控えてください。
- 消化の良い食事を心がけ、刺激物や脂っこいものは避けてください。
- 万が一、腹痛や血便などの異常があった場合は、速やかにクリニックにご連絡ください。
定期的な検査のすすめ
一度ポリープを切除しても、大腸の他の部位に新たなポリープが発生する可能性があります。そのため、切除後も医師の指示に従い、定期的に大腸内視鏡検査を受けることが非常に重要です。
症状がある場合や便潜血検査陽性の場合、あるいはポリープ切除歴がある場合などに大腸内視鏡検査が推奨されます。ご自身の状態に合わせて、適切なタイミングでの検査をご検討ください。
大腸ポリープに関してご不明な点やご不安なことがありましたら、どうぞお気軽に当院スタッフまでご相談ください。